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大阪高等裁判所 昭和49年(ラ)218号 決定

抗告人

株式会社さんご商会

右代表者

坂本正晴

主文

原決定を取消す。

本件競落を許さない。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二当裁判所の判断

記録によれば、原裁判所は本件競落物件につき鑑定人湯浅富一に命じた評価鑑定に基づき、最低競売価額を金四五〇万円と定めて第一回入札期日(昭和四八年八月三〇日)を開いたが入札の申出をなす者がなく、最低競売価額を順次減額して入札期日を重ね、第五回入札期日(昭和四九年七月一八日)の最低競売価額を金二六五万円と定めてこれを各入札期日の公告に掲げ、競落期日に抗告人に対して、金二六五万円を以て競落を許可したものであることが認められる。ところで、右鑑定人作成の鑑定書によれば、本件競落物件たる建物の敷地について借地権の存在することを前提として、建物自体の価額を金三七九万二、六〇〇円、借地権価額を金四二七万五、〇〇〇円と算定した上、借家権割合を参酌し、更に家賃より地代等の諸経費を考慮した総合還元利廻をも参酌して本件競売物件たる建物の価額を金四五〇万円と評価したことが認められる。しかしながら、抗告人提出にかかる判決謄本(大阪地方裁判所昭和四六年(ワ)第五、〇〇六号事件)及び当裁判所裁判所書記官作成の事件経過報告書によれば、原告崎山元三郎、被告三井源一(本件の債務者兼所有者)間の右建物収去土地明渡請求事件については右三井源一の借地権の抗弁を排斥して本件競落物件収去、敷地明渡を命ずる判決が昭和四九年一二月一二日に鑑定したことが認められる。したがつて、本件競落物件たる建物は収去を余儀なくされるものと認められ、現時点においては、鑑定人湯浅富一の評価はその鑑定の基礎たる事実について重大な過誤があることに帰し、最低競売価額決定の資料となすべからざるものであるから、その後最低競売価額が減額されているとはいえ、原裁判所がかかる評価に基づいて最低競売価額を定めて公告したのは違法であつて、ひつ竟正当な手続により適法な最低競売価額を定めなかつたのと実質において同一に帰着し、法律上の売却条件に違反するものといわざるを得ない。この点に関する抗告論旨は理由がある。

よつて、本件競落は右の点において違法であり、これを許すべきでないから原決定を取消すべきものとし、主文のとおり決定する。

(柴山利彦 弓削孟 篠田省二)

抗告の趣旨

原決定を取消し相当の裁判を求める。

抗告の理由

抗告人は本件不動産競売事件の競落人である、本件競売目的物件である〈省略〉

の建物につき敷地所有者崎山元三郎からの建物収去勝訴判決の事実がある。

このことは所有者敷地所有者貸借人等に問合せた時には周知の事である

にもかかわらず執行官、鑑定人等は故意に看過して報告書を作成していない且つ公告にも掲載していない。

故に抗告人競落人は重大な損害を蒙むつているので競落許可決定の取消を求む

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